お蔵入り作品はちゃんと「お蔵入り」しておこう。

新作ノベルゲームを制作中の九州壇氏です。時間はかかるかもしれませんが、きちんと完成させますので、あまり期待せずにお待ちください。

さて、本日は「お蔵入り作品」について書いてみます。制作をした方なら「これは公開できない」と思い、執筆をやめてしまった作品をお持ちではないでしょうか。「そんな作品も、捨てずにとっておくと良いことがあるなあ」と、最近の僕は実感しています。

かくいう僕も、たくさんのお蔵入り作品を持っています。その完成度にもけっこう幅があって。単なるアイデア、イメージを書いただけのものから、序盤~中盤部分は完成しているような作品まであります。こうした作品たちをどうするべきかは迷っていたのですが、いつか読むこともあるかもしれないと思い、「お蔵入りファイル」に保管するようにしていました。
これら作品を、僕は今でも読み返すことがあります。そうすると、これがなかなか面白いことに気が付きます。考えてみれば当たり前ですよね。昔のこととは言え、自分が面白いと思って書いた作品です。今の自分にも大いに響く部分を持っているわけです。
そんなお蔵入り作品は、うまくいけば「書き直して公開しよう」という気になるのかもしれません。ただ僕の場合は、残念ながら書き直そうという気にはなかなかなりません。制作を止めてしまうのにもやはりそれなりの理由があるから、仕方がないことかと思っています。
ただ、公開しないから無価値かというと、全くそんなことはないと考えています。というのも、新たに作り出す作品に影響を及ぼしてくれることがあるんですよね。
せっかくなので、僕の作品も紹介しながら具体例を書いてみます。僕の制作した中で最も完成度の高いお蔵入り作品は「瑠璃色の万年筆」というタイトルでした。完成目指してしばらく制作に取り組んでいた大作で、ノベルゲーム「吟遊詩人」の後書きの背景画面にも登場しています。テキスト量もかなりのもので、中盤までで「眠れない夜に」くらいの文字数になっていました。
せっかくなので、細かい内容まで少し書かせてください(笑) 主人公は物を書くのを趣味とする高校生。また、彼には2人の姉妹の幼馴染がいて、彼女らは天体観測を趣味としている、という設定でした。一時は疎遠になっていた彼らが、とあるきっかけでまた交流を持つようになる。幸せな時間を共有する3人。しかし、ストーリーの中盤、優しい姉のほうが急に亡くなってしまう。深く傷つく妹と、主人公。彼らは「書くこと」に癒しを見出し、作品を書き始める……。大まかにいうと、そんなストーリーでした。
この作品に注いでいた情熱は、今でも思い出せます。また、作品のモチーフとして「ルーリン彗星」を取り上げていたことも懐かしいです。ルーリン彗星というのは、2009年に最接近した彗星でして、次回また接近するのは数万年も後になるそうです。その途方もない時間を前にして、人間の儚さを思う、なんていう主人公の心理描写もありました。
今となっては、この作品を公開するつもりはありません。ストーリー進行にしても、心理描写にしても、ちょっと作者の独りよがり感が強いんですよね。リメイクするのも難しそうで、この作品は僕の「お蔵入りファイル」にとどめておこうと思っています。
ただ、この作品には僕が書いてみたいものがたくさんつまっていて、読み返すと今でもよい刺激を与えてくれます。その後の作品も、「瑠璃色の万年筆」の影響を大なり小なり受けていると感じますね。
たとえば、「君と再会した日」という作品。幼馴染の同級生は、天体観測を趣味としていました。また、この作品のクライマックスでは、以下の表現が出てきます。
「悲しかった。彼女が死んでしまったことが、悲しかった。
頭上に輝くのは、無数の星々。僕達が絶対に行くことのできない場所。
だが、たとえ僕が、あの星の裏側まで探したとしても。君はもう、この世界のどこにもいない。それが、たまらなく悲しかった。」
実のところ、これは「瑠璃色の万年筆」でほぼそのまま描かれていた表現でした(笑)
「眠れない夜に」も同様です。仲が良いようだけど、口には出せない気持ちをお互いに抱えている姉妹。その姉のほうが倒れてしまう(「眠れない夜に」では、亡くなってはいませんけど)。その後の妹との心の交流にもフォーカスを当てている、等が、「瑠璃色の万年筆」の影響を受けています。
また、新作は物を書くことを趣味とした高校生が主人公になります。この作品も、お蔵入り作品の影響を多少なりとも受けるだろうと思っています。
このように、確かに「瑠璃色の万年筆」はお蔵入りになりましたが、今も自分の作品の中に生きています。これらお蔵入り作品は、僕の基盤となる大地を肥沃にしてくれる。そして、そこに新たな作品の種が芽吹き、育っている。そんなイメージを持つこともありますね。

長々と自分語りをしてしまいすみません。つまりは、お蔵入り作品をきちんと「お蔵入り」しておくことには大きな価値がある、と言いたいのです。
「これは面白い!」というテンションのままに書き始め、しばらくすると燃え尽きてしまう。そういう経験は制作者なら誰しもあると思います。しかしそれも、(一時的であれ)自分が面白いと思った作品には違いないのです。表現の仕方を変えれば、後々の作品で生かせる可能性があります。書いたものを大切にとっておく習慣を持つと良いのではないかと思い、皆様にもお勧めしたい次第です。

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