「僕らのノベルゲーム」あとがき。

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先日、「僕らのノベルゲーム」を公開することができました。
3年もかけて作った作品ですので、今はとにかくほっとしています。
(ご興味ありましたら、ぜひこちらからプレイしてみてください)

さて、本日は「僕らのノベルゲーム」のあとがきを書かせて頂こうと思います。以下、ネタバレ注意です。




<そもそも、どうして今回はゲーム内にあとがきを入れなかったのか>
過去の7作品では、ゲーム内にあとがきを入れていました。こうしてブログで書くのは初めてのことです。
その理由はいくつかあるのですが。
「今回の制作では、なるべく作者が姿を見せないように努めよう」
そう決めていたことが大きいと思います。

本作品の主人公である新平は、僕と似ているところが多々あります。彼がゲームを作っている間、僕もずっとノベルゲームを作っていましたし。創作に対して、ちょっとイタいくらいの思い入れがあるのも一緒です(笑)
この状況は、彼の心を理解しやすいというメリットがありました。しかし一方で、物語を作る上ではかなり危険な環境だと認識していました。油断すると、僕は自分の言いたいことを新平に言ってもらいたくなるかもしれません。作者の我のせいで物語が歪めば、きっとプレイヤーは興ざめするだろうと思いました。
あとがきを書かなかったのは、新平と自分が近い存在だったからこそ、なるべくゲーム内で我を出したくなかったからでした。
(結果的に、どこまでちゃんとできたのかは自信がありませんけどね。熱いシーンでは、少なからず自分の思いが入ってしまっていた気もします)

<本作品を書こうと思ったきっかけ>
僕は以前より、「創作せずにはいられない人々」の心に興味があります。
創作せずに楽しく生きられるなら、それはそれで幸せなはずなのに。
それでも自分たちは作らずにはいられない。
それって、ものすごく面白いことだと思うんですよね。
(10年以上前に、こんな質問を某掲示板でしたこともありました。文章が今以上にこざかしいっすね……)

そうした特性もあって、僕は創作する人を主人公にした物語を書き続けてきました。第1作目「僕の愛する三匹」、第2作目「吟遊詩人」はどちらも創作する人の心を描いていて、自分としてはとても気に入っています。が、これだけではまだ書きたいものを書けていない感じがありました。

特に書きたいと思っていたのは、作者と作品の関係性についてです。

「作者がいるから作品ができる」
それは当然そうなんですけど。
一方で、作った作品から作者が影響を受けることもあると個人的には思っています。
「頑張って作った物語に、作者が助けられる」
そんな構造の物語を作ってみたいと、ずっと前から思っていました。
その後、「部員の皆で合作を作る物語」というアイデアが加わったことで、ストーリーの骨組みが出来上がりました。
さらにその後。様々な僕の煩悩が、物語を肉付けしていきました。

「夏を舞台にした青春ものを作ってみたい」
「同じく創作を愛している幼馴染を書きたい」
「夕方、先輩と2人っきりになるシチュエーションを書きたい」
「今度はすっきりとした気分でラストを迎えられるものを書きたい」

などなど……(笑)
僕の書いてみたいものが混ざっていくことで、物語は育っていきました。

<制作を始めて>
アイデアが熟成してくると、「これ、自分がすごく好きなものに仕上がりそうだな」という思いが高まってきました。
それから色々ありまして。最終的には、
「今の自分、そして10年前の自分が本気で感動できそうな作品を書こう」
という目標を立てて制作に取り掛かりました。

しかし、すぐに現実に直面しました。自分の力量では、書きたいものを全然うまく表現できなかったのです。
頭が固く、読書量もあまり多くないせいだと思うのですが。自分の文章がとにかく泥臭い感じがして、何度もうんざりしました。
物語の構造には少し自信があったのです。それだけに、
「せっかく降りてきてくれたのに、こんな作者で申し訳ない」
「他の制作者さんならもっとうまく書けるんだろうな」
という思いはずっとありました。
特に、当時は「ショート100」に参加していたこともあって、自分の技量のなさを痛感することがしばしばありましたね……。

とはいえ、作品を完成させるためには自分が作るほかありません。
「下手くそなりに、できることを全部やってやる!」と開き直り、制作を続けました。

<シナリオについて>
今回は書きたいものが明確にあったので、それをきちんと形にできるよう計画を立てました。
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上の画像は「僕らのノベルゲーム」の計画書です。
これは、「ショート100」企画でもお世話になった義弓くーさんの影響を受けて作りました。「くーさんはこんなにも綿密に計画を立てて物語を作っているのか」と感銘を受け、自分もしっかりと計画しようと思ったのです。物語を俯瞰するのに大変役立ちましたので、今後もやっていこうと思っています。

また、シナリオを書く上で絶対に守ろうと決めていたのは、
「新平たちの姿をリアルに描こう」
ということでした。

物語を書く上では「どこまでリアルに描くことにするのか」をきちんと決めるのが大事だと思っています。リアルさが全くなければ読者はさめるし。かといって、リアルさにこだわりすぎても面白くはならない。
「その作品が1番面白くなるであろうところで線引きし、その一線を作中で守り続ける」のが正解かなと僕は思っているのですが。
今回は、彼らのリアルな姿をきちんと描くべきだと思っていました。嘘っぽく書いてしまうと、この作品はひどくつまらないものになるという確信もありました。

「僕らのノベルゲーム」って、言ってしまえばとても平凡なお話なんですよね。
遥のように身も蓋もない言い方をすれば、「どこにでもいるような高校生たちが、趣味に熱中するだけのお話」です。
誰かが命の危機にさらされるわけではない。
ましてや、世界が滅びそうになるわけでもない。
見方によってはとても平和なお話ですし、「単なる趣味に必死になって馬鹿じゃないの?」と思われかねないストーリーです。
ギャグテイストで書いてしまえば、彼らはとても滑稽な存在として笑いを誘っただろうと思います。

でも、だからこそ、彼らの姿はできるだけリアルに描かねばならないと思いました。

確かに、彼らの物語はありふれたものかもしれない。けれど、彼らは自分たちなりに一生懸命考えて行動していたと思うし、僕はそんな彼らのドラマを描きたいと思いました。愛する彼らを、そして創作の大変さと楽しさを、馬鹿馬鹿しいものとして見られるのは絶対に嫌でした。そうなるくらいならこんな物語は描かない方がマシだとも思いました。リアルさを大切にして描こうと思ったのは、そういう理由からです。

ただ、そのおかげでかなり苦労もしました。
少しでも「この人物はこんなことしない」と思ったら、全て書き直しました。1日かけて書いたものを全部消すなんてこともザラでした。
「この展開が面白そう!」
「こんなセリフ回しが粋じゃない?」
なんて思っても、彼らがしなさそうと感じたら絶対に書きませんでした。
彼らの息遣いが聞こえてこない時には、とにかく想像し続けました。

正直に言うと、本当は入れてみたかったものがたくさんあります。
美央や谷口さん、遥先輩ともっとイチャつくシーンを入れたかったし。
テストプレイをするところで、「自信をもってください。あなたは素股です」という誤字を発見するなんてシーンも入れてみたかった(十中八九アウトですが)。
……この我慢も、全てはそれ以上にやりたいことがあったから。無駄ではなかったと信じたいところです。

なお、シナリオで1番苦戦したのはタツと言い合いになるシーンです。
あそこは、僕が部活動で経験したやりとりがモデルになっています。が、彼らのやりとりと自分らの口論がなかなかうまく切り離せず、どうしても自分の感情が入り込んでしまっていました。
「このシーンで、彼らはどんな思いでいたんだろう」
それを考えるために、何度も夜のファミレスに足を運びました。ちなみに、最後の最後まで書き続けていたのもこのシーンです。あれが自分なりの精一杯でしたが、いかがだったでしょうか。

<ビジュアル面について>
こちらも、いくつか新しい試みを行いました。特に、雪あられ様のご協力なくして「僕らのノベルゲーム」は完成しなかったと思います。
雪あられ様は、以前より僕が憧れていた方です。「この方の絵柄は作品の雰囲気にぴったり合いそうだ」と思い、ダメもとでお願いしてみたところ、こころよく了承してくださったのでした。
thumbnail_男子生徒1.png
thumbnail_女子高生3.png
「絵をお願いするからには、それをできるだけ生かした演出をしよう」
そんな考えも、当初からずっとありました。
頂いた立ち絵の表情はもともと7種類(通常、微笑み、笑い、怒り、悲しみ、恐れ、驚き)でした。それを、雪あられ様の許可を得た上で加工させて頂き、バリエーションを増やしていきました。
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画像は、美央の右向きの立ち絵です。全部で25個も作っていたんですね。余談ですが、美央は「苦笑い」が多く、谷口さんは「怒り」が多かったです(谷口さんは損な役回りも多くて申し訳なかったです。彼女、一見ツンツンしていますが、本当はとても優しい子だと思います)。

なお、立ち絵イラストはサイズが2000×750、ファイル形式はpngというかなり容量が大きくなる形にしています。
「なるべくイラストを劣化させずに圧縮したい」と考えていたところ、PNGGauntltを使って圧縮するという方法をねこのさんに教えて頂きました。ねこのさん、ありがとうございました。

また、イベントスチルについても、「最大限生かした演出をしよう」と決めていました。
thumbnail_4枚目.png
特に気に入っているのはどれかと言えば、エレナの横顔を描いた1枚でしょうか。でも、大人になった彼らが缶ビールで乾杯している絵も捨てがたいっすね……。
今回のイラストは、後生大事に持っておこうと思います。
雪あられ様、本当にありがとうございました。

また、素敵なタイトルロゴはDesign sal様にお願いさせて頂きました。こちらも想像した以上に素晴らしいものをご制作頂き、感動しました。「少女の胸はもう少し控えめにしてほしい」という貧乳好きが言いそうな依頼にも素早くご対応頂き、大変嬉しかったです。

<他のビジュアル面について>
他のビジュアル面については、「ショート100」のメンバーのおかげで改善できたところが多々あります。
特に、企画初期から頑張ってきた義弓くーさんには、大変お世話になりました。義弓くーさんの丁寧な仕事ぶりにはいつも感銘を受けていました。僕はもともと、興味がわかないことにはとことん興味がない人間なんですけどね。今回「もう少し見やすさにも注意を払ってみようかな」と思えたのは義弓くーさんの影響だと思います。
また、ビジュアルを充実させるためのスクリプト作業については、ねこのさんと仲良くさせて頂けたのが大変大きかったと思います。「こんなことってできますか?」と個人的にお聞きしてご教授頂いたこともありました。
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上の画像は、初期のプレイ画面です。
改めて見てみると、今のものよりも文字が少し読みにくい感じがすると思います。また、文字とキャラの顔の間にけっこう距離があるのも気になる点です。当初はこういう点を「どうでもいい」と思っていたのですが、「ショート100」メンバーのおかげで新たな考えを持つことができました。

さらに言うと、動画を作ってみようと思えたのも「ショート100」企画のおかげです。あほちゃんさんやアクアポラリスさんから「AviUtlを使って動画作成している」と教えて頂き、「自分もやってみよう」と思ったのです。おふたりの動画に比べると素朴極まりない出来になりましたが……(笑) 個人的には、入れて良かったと思っています。

このように、「ショート100」企画のおかげでクオリティを高められたところは数えきれないほどにあります。メンバーの皆様には本当に感謝しています。
17名の制作者による合作ノベル「ショート・ショート・ショート100」、もしまだ未プレイの方がいらっしゃいましたら、ぜひこちらからプレイしてみてください。

<ボツネタ>
本作品には、途中まで本気で導入しようと思っていたけど、結局ボツにしたものが3つあります。今後語る場もないと思うので、ちょっとだけ語らせてください。

1 6人目の部員、花菜(はな)
初期の構想では、文芸部にはもうひとり、1年生の花菜という女の子がいる予定でした。明るくてとても素直。でも少し空気が読めない子で、美央と仲が良いという設定でした。が、色々と理由があって今回は登場させないことにしました。

2 セーブ、ロード画面における残り日数の表示
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本作品はわりと長いので、「どこまでプレイしたか」が一目で分かるものをセーブ、ロード画面に入れたいと思っていました。
そこで、ねこのさんに質問させて頂き、上記のような表示ができるようにしていました。が、テストプレイをしていると、なぜかうまくいかないことがあったんですね。間違った日数が表示されてしまうこともあり、これはまずいと思いました。最終的には、「今の自分の力量を超えた技術だ」と結論付け、導入しないことにしました。

3 「琥珀」の存在
本作品には、「琥珀」という重要人物が登場する予定でした。
この人物については思い入れも強いので、少し長めに語らせてください(笑)

琥珀を登場させようと考えたのは、前作「眠れない夜に」の反省を生かそうと思ったからです。
あの作品は中盤以降で物語が大きく動くのですが、序盤は退屈な展開が続きます。そのため、「僕らのノベルゲーム」では、序盤から読者を引き込んでいける工夫をしたいと思い、「琥珀」という登場人物を加えたのでした。
琥珀は、新平が尊敬しているノベルゲーム制作者のハンドルネームです。新平は、顔も知らない彼(彼女?)の書く多彩な物語に陶酔しているという設定でした。
エレナを主人公にした物語を書こうと決まった後。新平は部室にひとり残り、パソコンで作業をしていました。休憩のつもりで「ふりげコレクション」を覗いていると、誰かがそこで制作者としてログインした形跡を見つけます。

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疑問に思いながらログインボタンを押してみると。なんと、「琥珀」としてログインできてしまったのでした……。
(その後、そのままOPに移るという演出が、結構気に入っていました)



そこから彼は、「この中の誰かが、琥珀さんなのだ」と思いながらメンバーの様子を見ていくことになります。その後、キャラの深堀りをする展開が続きますが、そこでも「この人が琥珀さんなんだろうか?」という疑問がしばしば頭をよぎってしまう、という描写をしていました。読者をひきつける方法としては、なかなか良い線をいっていたのでは、とも思っています。

ただ、最終的に琥珀は登場させないことにしました。
琥珀のことをあれこれ書いてしまうと、本作品で1番書きたいものがぼやけてしまうという印象がありました。序盤で読者をひきつける意味では有用な設定だと思っていたので、なかなか諦められなかったのですが。最終的には思い切って全て消しました。
なお、琥珀の正体ですが……。出番は少ないくせに、なぜか自分の下の名前を告げる人物がいたと思います。
佐山琴音。古賀遥。奥村久美。
彼女らの名前の1文字目をつなげると、なんと……!?
……という、まあ面白くもなんともないオチでした(笑)
琥珀が多彩な物語をハイペースで作ることができていたのは、3人の合同ペンネームだったから。パソコンの件は、文芸部の部室に遊びに来た2人が、勝手にパソコンで遊びだしてログインしたためでした。

琥珀を消そうと決めた時、一度は佐山と奥村も消しました。が、その後なぜか妙な寂しさを感じてしまいまして(笑) 最終的には、彼女らには登場してもらうことにしました。
なお、琥珀を消してしまったデメリットもけっこうあります。
琥珀との一件を通じて遥の弱さを描こうと思っていたので、完成版では遥が完璧超人みたいになってしまいました(笑)
また、遥がどんな作品を描くのかはあまり詳細に語れませんでした(なんとなく想像はつくかなという気もしますが)。
さらに言うと、「序盤がちょっと弱い」と印象を与えてしまったのなら、そこは琥珀に頼り過ぎていたせいなのだと思います。
ただ、消す判断自体は間違っていなかったと思っています。こうして供養もできたので、自分としては思い残すことはありません。

<制作中のモチベーションについて>
僕は「細く長く」で活動していこうと決めているので、「これはもう完成させられない」と思ったことはそこまで多くありません。
作りたくない時は休めばいいと自分にいつも言い聞かせています。
ただ、「僕らのノベルゲーム」については、1度だけ気持ちが折れそうになったことがありました。
それは、尊敬する作者様のひとりが創作物への評価のことで苦しんでいる様を見た時でした。それを見て、「ああ、自分もこれから同じことを思いそうだ」と感じたんですよね。
「自分が作りたいものを形にすればそれでいい」と思ってやってきたはずなのに、心穏やかではいられなくなりました。「あれだけ素晴らしいものを作れる方でも、評価に悩むことはあるのだ」。それは当たり前のことなんですけど。いざ目の当たりにしてみると、自分もショックでした。その後、自分が作っているゲームがひどくつまらないものに見えてきました。
自分なりにこだわって作っていたこともあってか、この時期は創作するのがかなりしんどくなり、少しの間「九州壇氏」としての活動を休むことにしました。最終的にこうして完成させられて、本当に良かったです。

断っておきますが、「その方のせいでモチベーションを乱された!」等と言いたいわけでは全くありません。それはそれで自分にとって大変貴重な経験で、大変勉強になりました。
余談ですが、作ったものを評価されたいと思うのは、制作者として当たり前の感情だと僕は思います。この感情とは、うまく付き合うことが大事なのでしょうが、そう理解しているつもりでも、僕はまだうまく感情を処理できていないようです(笑) これからも付き合い方を練習していくしかないっすね。

<無事に作品を公開できて>
おかげさまで、「僕らのノベルゲーム」は無事に公開され、温かいお言葉もいくつか頂きました。作者としては「今の自分ではこれ以上のものを作れない」と言えるくらい一生懸命作ったので、今の状況はものすごく嬉しいです。プレイしてくださった皆様には、心よりお礼申し上げます。
(ただ、僕は本来細々と活動してきた人間ですので、この大変ありがたい状況に舞い上がってしまっていたところもあると思います。もし、僕の言動を見苦しく思われた方がいらっしゃいましたら申し訳ございません)

今後についても少しだけ。おかげさまで、次回作の構想もぼんやりと決まっています。
そちらをゆっくりと進めるのはもちろんですが、あわせて、自分が表現できる幅をもう少し広げたいです。前述した通り、良いと思える発想があっても、今の自分ではそれをうまく表現できないと思う瞬間が多々あるんですよね。もっとたくさんの表現や物語に触れて、よりしなやかな表現者になれるように頑張っていきたいと思います。

このような長文を読んで頂き、本当にありがとうございました。
皆様、今後とも九州壇氏をよろしくお願いいたします。

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