「溺れる脳 人はなぜ依存症になるのか」を読了しました。

本日はまた読書をしました。
ここ最近はゲーム制作から離れているので、色々な作品や本を読みたくなっているんですよね……!

本日読んだのは、M・クーハー氏著「溺れる脳 人はなぜ依存症になるのか」です。
本の詳細はこちら
自分も脳の生理や形態変化を研究していることもあって、興味深く読むことができました。

本書はアルコールやコカイン、マリファナといった薬物の依存症のほか、ギャンブル、セックス、食べ物についての依存についても幅広く取り上げています。「基礎研究」→「臨床像」→「治療法」といった流れでまとめられているのが大変良かったです。
「依存症になると、その物質を使わなくなった後もしばらく脳の機能障害が残る」
「若者が違法薬物を使うと、そのダメージはより大きくなる」
こうしたことは広く知識として知られています。が、そのメカニズムについてはあまり知られていません。
本書は、そうしたメカニズムにも言及しているので、理解が深まりやすいと思います。
なお、専門家が読んでも興味深い1冊ですが、実際に依存症に苦しむ方やそのご家族が読んでも勉強になると思いました。

ここからは、個人的に勉強になった点をまとめていきます。

1番面白かったのは、依存形成にはエピジェネティクスが関係しているかもしれない、という点でした。
エピジェネティクス(後成遺伝学)とは、生物研究の学問のひとつです。
勉強のためにも、自分の言葉で簡単に解説してみます。

われわれ人間の細胞は37兆個あると言われていますが、その形や役割は場所によって全然違います。例えば、皮膚にある細胞は、皮膚としてふさわしい形や機能を持っています。もしも皮膚から胃液が分泌されたら大ごとですよね(笑)
さて、こうした細胞の作るための設計図となるのがDNAです。このDNAを読み取ってタンパクを作る仕組みがあるから、生物は細胞を増やすことができるのです。
このDNAは、37兆個あるすべての細胞で(基本的には)全く同一です。しかし、これは考えてみると不思議です。まったく同じDNAを持っているはずなのに、細胞はどうして違う形や機能を持つことができるのでしょう。
その答えは「DNAの読まれ方が違っているために、作られるタンパクが違うものになるから」です。この「DNAの読まれ方」について研究している学問がエピジェネティックスというわけです。

依存形成の話に戻りますが、薬物を摂取するとエピジェネティクな変化が起こる(つまり「DNAの読まれ方が変化してしまう」)という報告があることを知りませんでした。エピジェネティクな変化は通常すぐには戻らず、子孫にも継承されてしまうものもあります。薬をやめても脳はすぐに正常には戻らない。そのメカニズムにエピジェネティクスが関わっていることは、十分あり得ることだと個人的には思います。

その他、勉強になったことを雑多に書いていきます。
・中脳辺縁系ドーパミン神経経路は生存のために重要で、摂食や性行為といった行動に深くかかわっている。そのため、ほかの情報伝達経路よりも強力に働いている可能性がある。薬物はその経路に侵入し支配することで、生体に強力な影響力を与えているのかもしれない。薬物の支配が強力な理由は、ここにあるかもしれない(ただし、この説はまだ検証中で仮説の域を出ていない)。
・コカイン等、ドーパミントランスポーター阻害作用のある薬物が投与された場合、ドーパミン受容体、特にD2ドーパミン受容体レベルが低下する。薬物依存が確立した状態で薬物をやめてもD2ドーパミン受容体はすぐには通常のレベルまで上昇しない。数か月にわたって低下していたという報告がある。
・肥満患者においてもD2ドーパミン受容体のレベル低下がみられている(食物摂取は自然報酬である)。
・薬物依存における脆弱性の20~40%が遺伝要因に関連すると報告されている。
・「依存症は本人の責任だ。放っておけ」と論じる人がいる。確かに依存症に至った原因は本人の行動によるところもある。が、それをいえば高血圧や糖尿病といった疾患も同様である。依存症は脳内メカニズム異常を伴う「脳の疾患」である。依存症患者には適切な治療を受けさせるべきである。
・治療は自発的に受けるものとは限らない。裁判所に命じられたものであっても治療が有効であったというデータがある。「治療は自発的意志に基づくものでなければ成功しない」というのは都市伝説に過ぎない。
・依存症は代謝性疾患という考え方もある。コカイン依存症の患者にメサドン維持療法を行うことで生活機能が改善した人がある。
・薬物依存者の治療にワクチンを使用するというアイデアがあり、現在も研究中である。特定の薬物分子に対する抗体を注射し、薬物分子を無力化させる。ワクチンによって、コカインによる行動変化を効果的に抑制したというデータがある。なお、抗体は脳内には移行せず、神経伝達に対しては何も作用しない。

また気になったところがあったら追記するかもしれません。
脳の仕組みについて勉強してみたい、という方にもおすすめの1冊です。

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