「謝るなら、いつでもおいで」を読みました。

今回は、川名壮志さんの著書「謝るなら、いつでもおいで」の感想を書いていきます。

皆さんは、2004年に起きた佐世保小六女児同級生殺害事件をご存知でしょうか。当時小学6年生であった女児が、クラスメイトの女の子を学校で殺害したという事件です。
まだ小学生であった児童らに、一体何があったのか。
当時はかなり報道されていたことを僕もよく覚えています。なお、僕は全く知らなかったのですが、事件の被害者である女児は、毎日新聞社に勤める社員の娘さんだったそうです。また、著者の川名さんはこの社員の直属の部下であり、共に佐世保の新聞社で働いていた。そのため、当時の様子を非常に特殊な立場で見ることになったわけです。あの時、何が起こっていたのか。その後、この事件の関係者である家族らはどのように生きてきたのか。川名さんが取材した内容をまとめたノンフィクションが、本書になります。

本書の構成ですが、前半は当時の様子を時系列で振り返り、後半は事件の関係者3人に取材した内容を記しています。
前半部は、「どうして事件が起こったのか」、「事件を起こした女児はどんな子供だったのか」という疑問に焦点が当てられていました。ただ結局、どうしてなのかはよく分かりません。大人たちは、色々な断片を集め、あれこれそれっぽい理屈をつけようとしています。しかし、それを正しいと信じるのは危険なんじゃないかな、と思いました。どうしても何かしらの教訓が必要だというのであれば、「子供の気持ちを分かった気でいると痛い目にあうかもしれない」ことこそが重要だと思います。
後半部は、被害者の父、加害者の父、そして被害者の兄という、事件の関係者に川名さんが取材した内容が記されています。この中では、特に被害者の兄のお話が興味深かった。「一度謝罪してくれたら、あとは普通に生きてほしい」という言葉は、そうそう言えるものではないと思います。この言葉と出会えただけでも、本書を読んだ価値はあったと感じます。

さて、ここからは少し別の側面から本書について書いてみたいと思います。
本書には、マスメディアの方が多く出てきます。事件がおこってからたくさんの記者が佐世保にやってきますし、著者の川名さんも新聞記者。更には、被害者の父の御手洗さんも新聞記者です。本書を読むと、「事件に対するマスメディアの姿勢」がどんなものであるかを垣間見ることが出来ます。これもまた興味深かった。

僕は、マスメディアの姿勢に疑問を持つことが結構あります。もちろん、マスメディアという仕事の必要性は理解しています。客観的な事実を我々に伝えてくれるところはもちろん有益で、自分もその情報を生活の意思決定に役立てているところも多々あります。また、使命感を持ってお仕事をされている方も大勢いるはずです。川名さんも、「面白いものがみれたし、いっちょ稼いでやるか」なんて思いで本書を書いたわけではないと思っています。
しかし、何かの事件が起こった直後、被害者の家族や友人等に取材して回るという姿勢を、僕はどうしても好きになれません。人の悲しみ、怒りを飯の種にしているようで、下品さを感じるんですよね。「取材に来てほしい人もいるんだよ」という意見も聞いたこともありますが、それが大多数ではないんじゃないかと思います。

本書には、僕の苦手なマスメディアの姿勢が随所に見られていました。他社に負けない特ダネをつかむために、色々な人に取材を申し込む。被害者やその父親の顔写真を新聞で晒す。父親に記者会見をさせて、その様子をテレビで放映する。「それって、本当に世のためになるの? たんに自分たちが金儲けしたいからやってるんじゃないの?」と聞きたくなります。
ただ、本書を読んで思ったのは、こうした姿勢に新聞記者らも矛盾を感じているのだろうということです。著者は、被害者の父親が記者会見を開くと知った時、「こんなときに、なんで御手洗さんを引きずりだしたんだ」と述べています。また、その御手洗さん自身も「遺族が取材にさらされるつらさは、逆に僕自身が求めてきた側だから、よくわかる」とも話しています。彼らも人間であり、まっとうな感覚も当然有しているのです。
マスメディアの方々は、そのまっとうな感覚をおさえこんで仕事をしているところがあるのでしょう。本書でも結局、「こんなことはおかしいぞ!」と異を唱える記者はおらず、著者の川名さんも(疑問を感じながら)自分の仕事をこなしています。
その理由はどこにあるのか。最終的には、やっぱりお金のことが絡んでいるのだと思います。会社として売り上げをあげないといけない。他社に負けるわけにはいかない。だから、会社に属する人間として、おかしいと思いながらも取材をし、報道を続ける。この流れは、こうした「下品」な情報を買い手が求めている限り、変わらないのかもしれませんね……。

今回はかなり僕の個人的な持論も話してしまいましたね。お目汚し失礼いたしました。
事件のことだけでなく、マスメディアの現場についても知ることが出来る1冊でした。

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